褒賞授与式及び成果報告会を開催しました
農水産物の未知なるチカラの「見える化」と「社会実装」を目指す
人口動態は少子高齢化、出生児の障がいの増加、国家経済は公的医療費の高騰、税収の減少、健康概況は未病を含め多くの国民が病んでいます。また、コロナ禍を経て、将来の日本を担う世代への影響は多大です。そのような中、太古より生薬として重宝されてきた農作物や水産物によって人々を元気にし、年をとっても元気溌剌で働ける世に変える、いわゆる「医食同源」の社会実装による新たな社会の構築を目指す「公益財団法人 医食同源生薬研究財団」が2022年4月に設立されました。当財団の活動の一環として、十一月八日に東京・港区で開催された「褒賞授与式及び成果報告会」についてレポートします。
【褒賞授与】
「食 × 癌」に関する研究の第一人者 津金昌一郎氏
当財団では、医食同源や生薬の分野に関して、社会実装の観点からこれまでに高度な研究活動や技術開発、実践・普及活動を通じて、顕著な貢献をした方に対して、褒賞金一千万円及び褒賞状を授与しています。
財団第一回となる褒賞は、長年に亘り日本特有の塩蔵食品や大豆・イソフラボン、魚・n-3(オメガ3)系脂肪酸、緑茶などと各種癌との関連についての疫学研究を行った津金昌一郎氏(国際医療福祉大学大学院 医学研究科 公衆衛生学専攻 教授、がん予防・検診研究センター顧問)に授与されました。同氏は、研究にとどまらず、確かなエビデンスに基づいた日本人に効果的な「食育」を主体とする癌予防法を提言するためオールジャパンの疫学研究者による研究班を組織し、疫学研究の系統レビューやコホート研究の統合解析などに基づいて「日本人のための癌予防法」や「日本人の癌の原因」を明らかにするなど、社会実装にも尽力されています。
■津金氏コメント
「とくにこれからの社会に大切なことは、その情報が国民に正しく伝わり、それを守り、実践してもらうという『真の社会実装』です。これにあたっては、国民に頼りきるのではなく、食や情報を提供する側が産官学連携で取り組むことが絶対に必要と考えています」
【研究助成に関する成果報告会】
当財団では、様々な知見をもつ優秀な研究者に対し、農水産物由来の食品の効果・効能について探索的な研究、作用機序の解明などを目的として研究助成を行っています。当日は、褒賞授与に続き、本件に関する成果報告として、研究助成対象者3名の報告が行われました。
■山口大学 共同獣医学部 准教授 岡本 士毅 氏
【研究名】全身臓器のアセチルコリンバランスに着目した玄米機能成分γ-オリザノールによる健康向上効果の機序解明
■横浜薬科大学 薬学部 講師 髙梨 馨太 氏
【研究名】亜糊粉層残存米エキスによる免疫力活性化の検討
■神戸女子大学 家政学部 教授 栗原 伸公 氏
【研究名】高血圧予防における昆布出し殻の活用法の検討
【ご挨拶ならびに謝辞】
■財団代表理事・米井嘉一
「医食同源の社会実装」をテーマにした当財団の活動をはじめとして、これまでの私の研究実績が、つい先日、国際的な総合科学ジャーナル「Nature」にご評価いただき、掲載に向けたお申し出をいただきました。東洋医学的な「実践」を重視してきたことから、まさか「Nature」にご縁をいただけるとは大変驚きました。これもひとえに当財団とともに医食同源を実践し、私たちと共に研究してくださった皆さまのお力添えがあってのことでございます。
■財団名誉会長・雜賀慶二
病弱であった私自身がコメ食を通じて医食同源を実感するなかで、他の食物にも同様の効能があるのではないかと考え、立ち上げたのが当財団です。本日、皆様の成果発表を受けて、医食同源の社会実装という想いを汲んで真摯に研究に当たっていただいている姿に感銘を受け、財団を立ち上げて本当に良かったと改めて実感いたしました。多くの関係者に厚く御礼申し上げます。
【主導研究:事例】
沖縄県宮古島市における若年層の健康増進施策について
当財団では、主に日本人の主食であるコメや農水産物由来の食品の健康への寄与、医療費・介護費を増大させている疾病・疾患との関係性について、財団自らが医学的根拠となる実証的な研究を行っています。
本年4月からは、沖縄県宮古島市で「これからの宮古島を担う若年層の健康増進を図り、地域における医療費の抑制に向けた未病予防対策及び新たな健康づくり」と題して、産官学連携の研究を行っています。近年、宮古島市では、子供たちの間でも肥満傾向が高くなり、小学生にいたっては、糖尿病、脂質異常等の生活習慣病リスクが高まる「高度肥満」の割合が、全国平均の0.8%に対して、島内は約3.6倍となる2.9%であることから改善が急務となっています。本研究では、宮古地区医師会が中心となり現状の問題解決に向けて、食べやすくて美味しい医食同源米のロウ層除去玄米を本年4月より宮古島内の小中一貫校の児童生徒約300名を対象に給食にて提供を開始しました。本件は令和9年6月に成果発表の予定で、本研究によって得られたエビデンスを活用し、宮古島市内における「食」の取り組みの拡大を図るとともに、社会実装のモデルケースとなるような結果の創出を目指してまいります。