2025/11/21

【中村学園大学】保育所給食の質が新型コロナウイルス感染症・ インフルエン ザ等の感染状況に及ぼす影響について

公益財団法人医食同源生薬研究財団は中村学園大学食物栄養学科 森脇千夏教授に2023年度から研究費を提供し、保育所給食の質が新型コロナウイルス感染症・インフルエンザ等の感染状況に及ぼす影響について研究を実施しました。研究結果の概要は以下の通りです。


【研究の背景と目的】

平成27年度より、福岡市内A保育園において「野菜100g以上、食塩相当量2g未満」を基準とした給食の提供を開始しました。翌年には園児による食味試験で最も好評だった「医食同源米(金芽米)」を主食に採用したところ、食べ残しが大幅に減少し、現在でも99%以上の高い喫食率(残さず食べる割合)を維持しています。

保育園「喫食状況グラフ」


給食改善後、保護者へのアンケートで「熱が出にくくなった」「風邪をひきにくくなった」といった声が多く寄せられました。実際の年間データを確認すると、給食改善前に47人(罹患率39.2%)だったインフルエンザによる欠席者が、改善後は19〜24人(同15.8〜20.0%)へと明確に減少しました。福岡県の平均的なデータと比較しても、感染を約3分の1に抑えられていることがわかっています。

保育園「インフルエンザ感染者数グラフ」


さらに、令和2年度以降の新型コロナウイルスに関しても、同園では感染者数が約6分の1にとどまるという結果が得られました。免疫力が十分に発達していない幼児にとって、日々の「栄養」は感染症を防ぎ、重症化を抑えるための免疫システム強化に重要な役割を 果たします。しかし、幼児期の栄養摂取と新型コロナウイルスなどの感染状況との関連を 調査した研究は、これまでほとんど見当たりませんでした。

保育園「新型コロナウィルス感染状況グラフ」


近年、女性の就業率上昇に伴い保育園を利用する幼児が増加しています。
保育園の給食は幼児が1日に必要な食事量の約半分を担っており、子どもの発育や健康維持に直結します。中でも「主食」は摂取エネルギーの40~50%を占めるため、毎日の習慣となる主食の「質」が身体に与える影響は極めて大きいと言えます。
研究の目的本研究はこれらの背景を踏まえ、主食をはじめとする「保育所給食の質(栄養素や食品群別の摂取量、食事のパターンなど)」が、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染状況にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的としています。


【調査方法】

福岡市内の認可保育園306施設を対象に、園長会を通じてアンケート調査を実施しました。

  1. 感染者数の調査
    インフルエンザ:2017年4月~2022年3月(5年間)
    新型コロナウイルス:2020年4月~2022年3月(2年間)
  2. 感染症対策の実施状況
    国のガイドラインを基にした8項目について、各園の取組み状況を調査しました。
  3. 給食内容の調査
    献立作成の基本方針、食事の形式、主食の提供状況、食べ残しの量のほか、実際の献立表(計24日分)や食品群別の摂取量など、詳細なデータを収集しました。
    対象施設のうち、175施設(回収率57.2%)、延べ20,287名の園児に関するデータが得ら れました。

【調査成果】

対象施設のうち、175施設(回収率57.2%)、延べ20,287名の園児に関するデータが 得られました。

  1. 新型コロナウイルスの感染状況
    2020年度はほとんど感染者が見られませんでしたが、2021年度は園児全体の10.9%(2,212名)が感染しました。年代別に見ると、3歳未満よりも3歳以上の幼児の方が\感染率が高い傾向がありました。
  2. 感染症対策の実施状況
    食事中の衛生管理(食べこぼしの処理や食器の共有を避けるなど)は8割以上の園で「非常によくできている」と徹底されていました。一方で、環境消毒や手洗いの徹底は約5割、さらに幼児という特性上、食事中の「密」を避ける対策は約3割にとどまるなど、保育現場における対策の難しさも浮き彫りになりました。
  3. 給食内容と感染状況の関連
    約7割の園が福岡市の統一献立を利用しており、主食には「白米+押し麦」や「玄米」などが提供されていました。提供される栄養素はどの園も基準を満たしていましたが、施設ごとに摂取状況には差が見られました。これらのデータを分析した結果、「たんぱく質」「食物繊維」「ビタミン類」の取得状況が、新型コロナウイルスの感染状況と関連していることが明らかになりました。

保育園「結果:主食区分と新型コロナウィルス感染率の関係」


【今後の展望】

因果関係を確定するには、交絡因子のさらなる調整や、媒介分析、感度解析などが必要です。今後、縦断的なデザインや介入研究により、主食の選択が感染予防に寄与しうるかを検証していく価値があると考えます。
主食の質向上とバランスのよい献立は、保育現場で実装可能かつ感染症対策の補完策となります。さらなる検証により、実効性の高い給食モデルの確立を目指します。